お腹が冷えて腹痛・下痢になる原因は身体の防御反応にあり

健やかな健康観を育むうえで、自分の身体について知ることは重要です。ヒトの体は、とても良くできています。あなたが思っている以上に。

身体に備えられた「自然治癒力」をもっと信頼してみませんか?

おなかの冷えからくる下痢について

お腹や腰が冷えると腹痛を起こしたりお腹を下してしまう、という生理現象があります。どうしておなかが冷えると痛くなったり緩んで下したりしてしまうのでしょうか?

夏場だから調子に乗って冷房付けながらスナック菓子みたいに氷を齧ってたら、案の定ギュルギュル…

気付いたらね、掛け布団はねのけちゃってたのよ。冬だから冷えちゃうしでお腹が超特急の急降下で大変だったわよ!

誰もが経験する、冷えからくる下痢。

一見すると意味がなさそうですが、人体の神秘とも思えるような秘密やメカニズムがあるのでしょうか?

自律神経の乱れ、ホントに?

例えば、悪いものを食べたり、感染症を起こすような細菌に感染した場合、それを体外に排出するために下痢になることがあります。このことは一般に広く信じられていますし、信じるに足る説得力があります。

ですが、「お腹が冷える」と「お腹を下す」をつなぐ論理には、ネット上で探っても納得のいくものがありません。一般的には、「冷えると自律神経が乱れて腸の異常収縮が起こり、下痢になる」と説明されています。

みんな大好き、自律神経の乱れ!

原因不明な生理現象の理由として、「自律神経の乱れ」以上便利なものはありません。

要するに、「刺激を受けると身体がバカになってイカレちまう」と言うわけです。

ちょいと、待たれぃ。身体は全然、バカじゃない。

足下の冷えにもご用心

本記事には足元の冷えからくる下痢でお悩みの方や、お腹を壊したまさにそのとき脚がすごく冷えている方からアクセスがあります。

お腹の冷え、足もとのひえ、いずれにも通ずる原因とメカニズムについて考えてみましょう。

冷えからくる下痢の原因

あなたの身体は、あなた自身の生命を守ろうとします。このことは、自明の前提として公理であると考えて良いのではないかと思います。

ならば、「お腹を下す」ことは「お腹が冷える」という状況から生命を守るため身体が反応した結果である、と考えるのが筋でしょう。

そして下痢と言う現象が「大腸を経由した水分の体外排出」であることを踏まえれば、答えは自ずと導かれます。

水分の体外排出

下痢により排出される水分は血液からもたらされます。そして血液から水分を排出した結果、以下の変化が起こります。

  • 手先・足先など、末梢への体熱の移動を抑制して体幹部の熱を逃がしにくくなる
  • 熱容量を下げて体温を素早く上げられるようになる

つまり、急激な冷えに接した緊急事態においては熱を逃がしてしまう手や足への血の巡りを敢えてストップしてしまい、お腹周りの最も大事な部分だけを確実に温めようとしていると考えてみましょう。

冷えるとおしっこが近くなるのも、水分の体外排出という同じ理由によるものと思われます。

実際、下痢した時には手先足先の冷えを感じる方も。体内から水を捨て、血の巡りをあえて抑制して熱の逃散を防ぐ。そうした見立てと末端の冷えの感覚は合致します。

なお汗による水分の排泄には「体熱を奪って身体を冷やす」という大きな効果を伴うため、体が冷えを感じた際の水分排出経路としては不適切のようです。

大腸経由の水分排出、その他の働き

平常時の水分排出は、主に汗と尿を通じて行われます。これらの経路は排出に特化しており、とても効率的に出来上がっています。

反対に、大腸は腸内要物の水分の吸収を生業としていますので、排出を行う器官としては非効率的でエネルギー損失が大きいと考えられます。

ただし、「お腹が冷える」と言う状況において身体はお腹を温めようとしますので、非効率的な水分排出を行う大腸はエネルギーを大量に使う発熱機関として利用されることになります。

あるいは、酸塩基反応(酸アルカリ反応)などの化学反応により水と同時に熱(中和熱)を産生しているのかもしれません。酸性の胃液と、アルカリ性の腸液を混ぜ合わせると、水と熱(と塩)が発生し、下痢として排出される…みたいな。

温めるべきところ(体幹部、体の中心部)で熱を生み出す。熱の移動や放散によるロスが最小限になることを考えれば、これほど理に適ったことはありません。

熱産生の結果として便に水が混じるのも、また平常時の体熱産生に寄与していると言われる腸内細菌叢を洗い流すことになろうとも、生命維持と引き換えなら安い物です。

さらに、お腹を下した時にお腹が痛くなることは以下のように解釈すべきでしょう。

腸の平滑筋収縮

平常時の体熱産生を担うのは骨格筋(運動時に使用される筋肉)だと言われます。

しかし、上記のように水分を体外へ排出した場合、震えるなどして手足で熱を産生しても上手く体幹部を温めることができません。

脚の筋肉が熱を生み出しても、血が巡っていないため身体は温まらないのです。

ならば体幹部で熱を産生しているのでは?と考えてみると、その任を担えそうなのは下腹部に収まる腸管(小腸、大腸)です。腸は平滑筋の組織ですが、これを自律的・無意識的にグイグイと動かして熱を産生しているのではないかと思われます。

お腹を下す時は大抵、お腹が痛くなります。「自律神経が乱れて腸の異常収縮が起こり」という説明が胡散臭いのは、乱れてという身体バカ的表現を用いているためです。

身体カシコ的に表現するならば、「自律神経は体を温める目的で通常よりも強く腸を収縮させる」がために、腹痛が起こるのではないかと考えられます。

体熱産生に関する補足

なお、下痢をするほどでもない冷え、通常の寒冷刺激に対しては首や背中にある褐色脂肪細胞が働き、カラダを温めてくれます。

ある程度時間に余裕があれば、寒冷刺激を受けて褐色脂肪細胞内の代謝が活性化し、脂肪を燃やして熱に換えてくれます。

腸管を熱産生に使うことがあるとすれば、それは身体が出した「非常事態宣言」と捉えるべきでしょう。即効性警報作用が求められているのだ、と。

腹痛とは、危険な場所や物へは近づくな!という警報をより印象深く記憶に刻むための進化的仕掛けでもあるのかもしれません。

まとめと対処法

難しい理屈は抜きにして、冷えに対する身体の反応はこんな感じでしょうか。

  1. 身体から水分を抜き、お腹周りの温度を上昇させやすくする。
  2. 血液から水分を抜き、手先足先から体温が逃げないようにする。
  3. 水を排出する仕事を行い、熱を生み出す。
  4. 腸を収縮する運動を行い、熱を生み出す。
  5. お腹の痛みにより「けっこうお腹冷えてます」もしくは「もうお腹冷やしちゃだめよ」、と本人に自覚を促す。

以上をまとめますと、『「お腹を下す」という現象は、「お腹が冷える」という生命を脅かす状況に対処するため、身体が身体自身を温めるために行う防御反応の目に見える結果である』と言えましょう。

あなたの身体は、あなたが思っている以上に賢いのです。

したがって冷えてお腹を下した際にあなたがすべきことは下痢止めの薬を服用することではなく、内側から温めようとしてくれているあなたの身体を信頼し、体幹部や首回り、あるいは吐く息から熱が逃げないように衣服や腹巻、ネックウォーマーなどを重ね着したり鼻呼吸を心掛けたりすることです。

視覚的で具体的なイメージ

生理学を参照した上記のちょっと難しい話を簡単に理解し、なおかつ記憶に残りやすくするために例え話を一つ二つ。

まず、「こたつ」をイメージしてみましょう。

photo by photo-ac.com

何か足りませんね。

そう、こたつ布団が足りません。これでは効率的に温まらない。

炬燵布団をかけましょう。

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はい、すてきなぬくぬく空間が完成しました。

さて、ここで起きたことは、私たちの身体が自律神経を十全に働かせることで為し遂げた事と同じです。

つまり、冷えに際して身体が手足の血管を収縮させるのは、熱を外に逃がさないためであり、またエネルギーを効率よく温度上昇に使うためなのでした。

次に、「薬缶」をイメージしましょう。「やかん」ですね。

お茶を一杯いただくために、薬缶で湯を沸かします。寒いので、ちょっと急いで。

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しかし、なみなみと水を汲んでしまったので中々沸いてくれません。急いでいるのに困りました。火力を上げましょうか、いやでも、まず真っ先にやるべきことがあります。

薬缶の水を捨て、必要最小限だけを沸かすことにしましょう。

さて、ここで選択した薬缶の中の水を捨てるという行為、これがまさしく冷えに際して下痢をしてしまうという状況の例えになっています。

早く沸かすためには、必要最低限の水だけを残して後は捨ててしまうのが最も効率的だということです。

また、お腹の痛みは「火力アップ」と考えることができるのではないでしょうか。

小さなお子さんなど、血管やら血液やら骨格筋やらと難しい言葉で説明するのが難しい場合はこうした「たとえ話」での説明をオススメします。

ついでの補記

下痢をすると、おしりの穴が痛い…

誰もが経験するこうした事態は、トイレットペーパーの使い過ぎで肛門周辺の粘膜・皮膚が荒れるから…も理由の一部ではありますが、より直接的には「下痢の水様便がアルカリ性だから」です。下痢に含まれる腸液がアルカリ性とのこと。

アルカリ性はヒトの身体をつくるタンパク質を溶かしてしまうため、ヒリヒリと痛むみたい。できれば紙で拭くだけでなく、ウォッシュレットできれいに流したいですね。

なお平常時は腸内の乳酸菌群がせっせと糖を分解して酸を産生し、アルカリを中和してくれます。サンキュー、乳酸菌!

あなたの身体が本来持つ力を、信じてみる

いかがだったでしょうか?「刺激で身体がバカになる」仮説よりも、よほど信憑性があるのではないでしょうか。

身体バカ仮説の困った点は、「バカになった身体は、クスリを使って正してやらねばならん!ふんっ!!」という考えに陥りやすいことです。大抵の対症療法薬使用者にみられる態度、かもしれません。

一方身体カシコ仮説においては、「私の生命を守るためにちゃんと働いてくれてありがとう、身体さん!」とトイレの中で身体を思いやることだって可能です。

いずれが健やかな健康観を持っているか、決めるのはあなた自身です。あなたの身体を信用してみるのも、悪くないのではありませんか?

クスリに頼らずできること

プラセボ製薬はただただ介護者向けにプラセボ(偽薬、プラセボともいう)を販売しているだけの企業ではありません。薬に頼らず、自らの感覚を信じてみるという健康観を提供したいと考えています。

プラセボが自然治癒力を高めるかどうか、確かなことは何もわかりません。でも安直に対症療法薬を使用するよりは、あなたの身体と自然治癒力を信じてみるべきかと。

またプラセボ効果を信じてみることは、身体カシコ仮説を信じることに繋がるのではないかと信じています。結局のところ、現段階では信じるか否かでしか物事を語ることができません。

身体が発する不快症状に対して、クスリに頼らずできることをまずは考えてみましょう。

体熱は大事な資源です

体熱はあなたの身体にとって非常に大事な資源です。お腹周りの冷え対策としてできることと言えば「熱を逃がさない」ことに尽きますので、ご自愛ください。

腹巻、ネックウォーマー、厚手の靴下などなど。こうした防寒・耐寒用品で冷えにくい状態をキープしましょう。

腹巻を常用されている方は結構おられるようです。

お腹が痛くなった後のこと

基本的に、身体が下痢を求めている時にそれを止めてはいけません。下痢止め薬で何とか止めるよりは、出し切ることを考えた方が得策です。

その後で、できることは何でしょうか?

温かい場所へ移動する、ストーブなどで外側から温める、ホット・ポカリなどを飲用し水分補給と同時に内側から熱を補給する、など。

ホットポカリは粉末ポカリ適量をお湯で溶かすだけ!

しょうがドリンクなど「指先までポカポカ」を謳う製品は熱産生を増すと同時に発汗と血管拡張により手先・足先からの熱の放散を促し、逆っ効果になっているように思われて仕方がありません。

しょうがよりもホット・ポカリ、また熱補給にオススメなのは、熱容量が大きいと思われるくず湯です。

甘いのはどうも苦手で、という方はカフェインの入ったコーヒー、紅茶、緑茶より液味噌で即席みそスープを作るとよいのでは。

下痢で失われるのは水分だけではありません。塩分もまた同時に排出されますので、水分と共に塩分も補給しましょう。

さらに心理面からのアプローチを考えるならば、太陽光に当たる、太陽をチラ見するなどが有効かもしれません。心の冷え性は目からもたらされます。

赤色やオレンジ色など暖色系のモノ・照明・発光体をいつも目の届く範囲においておくのも良いかもしれません。腹痛の時はこうしたものを見つめつつ「大丈夫、大丈夫だよ」と身体を安心させてあげてください。

日常を見直してみる

ゲリ気味が癖になっている方は、日常生活や食事を見直してみると良いかもしれません。

  • 身体が温まるくらいに毎日歩く
  • 冷たいものはなるべく摂らない
  • タンパク質(肉、魚、たまご、豆腐など)を増やす
  • 脂質(あぶら身、○○オイル)を増やす

脂質など栄養豊富なナッツ類もおすすめです。

既に述べましたが体熱産生に関わる褐色脂肪細胞(首や背中にあり、寒冷刺激があると脂肪を燃やして熱を発生する細胞)の働きは、普段の食生活によって維持・補強されます。

また冬に限らず夏でも、できるだけ体温以下のものを摂取しないよう心がける方は常温水もしくは白湯を日常的に飲まれているようです。

体温より低い飲料水は、もちろん身体を冷やしてしまいます。普段から氷を含むジュースなどを避けて体温維持に気を使い、お腹を壊した緊急時にもホットポカリやくず湯、みそ汁などをサッと作って飲む習慣。

冷えや寒さに負けない体は、普段の食事や適切な温度の飲料水から作られます。それらしい効果を訴える健康食品やサプリメントではなく。