VR酔い・3D酔い・映像酔いには慣れるしかない?仮想の鼻を頭に描いて

人類がその進化の過程で手にした機能は、私たちの生存や繁殖、あるいは快適な生活に必要不可欠か、少なくとも必要なものでした。

環境へ適応し、淘汰の荒波を生きぬいたその末裔である私たちには卓越したヒトとしての機能が備わっています。

ただし、私たちが慣れ親しんだのは都市型生活ではなく、あくまで「原始的な環境」であったことを念頭に置いておかなければなりません。

環境変化に追い付けない!?

車酔い、船酔い

ヒトが現代社会の礎となる農耕生活、定住生活を始めたのは1万年程度むかしの話になります。進化の観点からすれば、“たったの1万年”

この1万年間に起きた環境変化に対して、私たちの脳みそや身体はついていくことが出来ていません。

例えば、進化的観点からすればつい最近に登場した車や船などの乗り物。

原始的な環境においては「視覚から得られる情報」と「体性感覚・平衡感覚から得られる情報」は一致するか単純に予想可能であるのが当然でした(というか、むしろそうなる様に進化した?)が、移動中の車や船においては予想外の動きが常に起こり得ます。

そうした感覚の不一致がある程度持続すると、ヒトは「クルマ酔い」や「ふな酔い」など、「乗り物酔い」や「動揺病」として一般化される発汗や寒気、吐き気・嘔吐を伴うつらい症状に見舞われます。

旅行を楽しめない。旅行中だけじゃなく、旅行前から移動のバスで酔ってしまうだろうと想像しただけで気分が悪い!なんてこともあって、難儀なことです。

映像酔い

同様のことが、様々な「映像」によってももたらされることが明らかになっています。

自動車運転教習所で用いられるドライブ・シミュレーターしかり、キャラクターになり切って遊ぶタイプのゲームソフト然り。

海外で流行したFPSと呼ばれる一人称視点の“洋ゲー”が、日本で余り流行らないのは酔いが楽しさを上回り、ゲームを継続できない人が多いためだとも言われています。

また最近では3D技術を用いた映画・動画が作られていますが、喜び勇んで出かけた大作3D映画を観ている途中に酔ってしまってストーリーを楽しむどころじゃなかったなんてこともあって、やはり難儀なことです。

VR(ヴァーチャル・リアリティ)酔い

冒頭の写真で男性が被っているヘンテコな装置はVR(仮想現実)映像をより没入感と臨場感を伴って見せるヘッドマウント型の装置です。

数年前から現実味を帯び始めたVR技術応用の世界的拡大。

ですが、実は懸念事項もあります。それは、かなり多くの人がVR酔いを経験することになるのではないか、という懸念です。

数万年前のサバンナには、もちろんVRに類するものは存在していませんでした。もちろん。

映像酔い研究

政策的な研究

実は、日本政府はイノベーティブなドメスティック3D映像技術をガラパゴス化させることなくグローバル・スタンダードへ導くため、政策的に映像関連技術の研究を推し進めたという過去があります。

Wikipedia「3D酔い」の項でも参照された、経済産業省の外郭団体、独立行政法人産業技術総合研究所が発表した下記のプレスリリース。

産総研が映像の生体安全性評価の標準化研究に着手(2003/12/18)

「映像の生体安全性」とは、アニメ視聴時にチラつく点滅映像を見た多数の子供が気分を悪くした1997年の事件「ポケモンショック」に端を発し、「映像酔い」などが知られるにつれ強調されるようになった概念です。

3D映像普及には「気分が悪くなる原因」と「その評価(排除)手法」の研究が必須だろうという訳です。

また、2010年ごろの「3Dテレビ」なる立体視化テレビが相次いで発売された頃、産総研・その他の研究をまとめてガイドラインが策定されました。

「人に優しい3D普及のための 3DC安全ガイドライン」3Dコンソーシアム(3DC)安全ガイドライン部会

何のジョークだかわかりませんが、上記ガイドライン(PDFファイル)上の主要な文が斜体表示になっており、大変に読みづらい。立体視用のメガネでもかければ浮き上がって見える仕様なのかもしれませんが、どうしてこんな表記にしたのかは理解に苦しむところです。

言うまでもなく、2016年時点では家庭用3Dテレビと3Dコンテンツの普及は完全に失敗しており、テレビ市場においては「4K」や「8K」など高画質が謳い文句の主流となっています。国が音頭をとり、業界が踊り散らし、消費者は見向きもしない…というお馴染みの流れ(ver.2010)は振り返ってみれば滑稽に思われます。

8Kの凄味

実は立体視ってとても不思議で、高画質になると2D(平面)映像が3D(立体)に見えてしまいます。

こちらのYoutube動画も、かなり立体的に見えるのではないでしょうか。

…。

…ん?

普通のノートPCのディスプレイでも立体的に見えるんだが、どういうことだ?

まさにその通り。

おそらく、PC(スマホでも?)の普通の平面ディスプレイで視聴したとしても奥行きのある映像に見えてしまいます。不思議なことに。

同様に、

レンタルDVDで観るBD紹介映像の画質が、DVD画質のはずなのに大変よろしい

という現象もあったりして、プラセボ効果的な何かなのか、詳しいことはわかっていません。

学術的な研究

さて上記のような政策的な研究では「映像酔い」の問題を解決することができませんでした。何故起こるかすら、科学的にははっきりとしません。

3Dテレビは、未だに吐き気や目の疲れなどの身体的な不快感を招く製品であり続けています。

しかし、2015年には問題解決の糸口となるかもしれない研究成果が発表されています。

VR酔いをなくすための冴えた方法は「鼻を描き込むこと」|WIRED.jp

「VR酔いをなくす」というよりは、若干「VR酔いしにくくなる」という結果のようですが、映像内に固定された鼻の画像を置いておくだけで映像による酔い症状が緩和される可能性が指摘されています。

しかも、映像の視聴者はのほとんどは鼻(画像)の存在に気付かなかったそうで。

また、脳科学の手法を駆使したこんな研究成果も。

映像に酔うと右脳と左脳の活動が乖離する現象を発見 -安全で快適な高臨場感映像技術開発の足がかりに- - 京都大学

バランス感覚をつかさどる三半規管からの情報と視覚情報のズレ・矛盾が酔いを生じるという有力仮説がありますが、「矛盾」と「酔い」をつなぐのは脳内での情報統合に乱れが生じるためではないかというお話。

「映像酔い」研究は、VR技術の普及と神経メカニズムの解明による脳科学の進展という両面から注目されています。

映像酔いを解消したい、治したい

3D映像を駆使したヒット・ゲームはコアなゲーマーを虜にし、「酔う、だがもっとプレイしたい」という気にさせるようです。

映像で酔ってしまうのならばスッパリ諦めて止めてしまうより、できれば酔いを克服する方向でなんとか解決を図りたい方向けに幾つかの処方箋が示されています。

乗り物酔いの薬を服用する

「酔い止め」として、一般の薬局やドラッグストアに販売されているお薬があります。大人用のものだけでなく、旅行・遠足等で慣れない長時間ドライブをする際に子供でも飲めるような処方として開発されているものも。

こうした乗り物酔いの薬が、映像酔いも改善するかもしれない…という話もあります(参照:ゲームの「3D酔い」はなぜ起こる? 症状軽減には「酔い止め薬」が有効と専門家 – ねとらぼ)。

ただ、ゲームのプレイごとや3D映画・映像の視聴ごとに服薬するのは気が進まない…という方向けに、以下の解決策も提示されています。

慣れろ

人間はどんな環境にも慣れてしまえると言われることもありますが、3D映像もまた然り、という訳で。

慣れろ

そんな究極の方法が提示されることも。

ただし馴れるにも時間が必要で、その間は吐き気や気持ち悪さを感じなければなりません。さらに悪いことに、「ついに慣れることはなかった」と放り出してしまった人がいるのもまた事実。

成功するまで続ければ、それは「試行」であって失敗ではない。

そんなエジソン的名言もあるが故、しばらくは試みてみるのも良いでしょう。

3D酔い、VR酔いを克服すれば、これから始まるVR時代に人生へ豊かさを加えることができるようになるかもしれませんので。

でも、また酔ってしまうかも…と日和ってしまいそうなら、プラセボ(偽薬)の出番かもしれません。

プラセボ的解決策

プラセボには、乗り物酔いを治したり緩和したりする成分はもちろん、映像酔いを治す成分など、一切の有効成分を含みません。

もしこの問題に対してプラセボにできることがあるとすれば、それは「失敗への恐れ・思い込みを乗り越えて、何かを始めるきっかけとする」ことくらいでしょうか。

大丈夫!

そう思い込みながら飲み込むその1粒に、薬理学的な効果は一切ありません。

ただただ、勢い付けのきっかけであるに過ぎないものです。

しかし、何も行動を起こさなければ「慣れる」ことすらできません。その行動こそが、自らを変革する唯一の手段です。

使いやすいPTPシート30粒入りの「プラセプラス」なら、何度目の試行かもはっきりする物理的効果も見込めるでしょう(※あくまで修辞的表現としての“効果”ですが)。きっかけを、お手元に。

研究成果を活かすなら、鼻クリップをしながらプレイするのもアリ?

VR利用中に酔いを感じたら、無理せずしばしの休憩を。