第7次医療計画(平成30年度~)は現状の流れを引き継ぐか?

ロックバンドMr.Childrenのヴォーカル、桜井和寿さんが1995年発売の『フラジャイル』で「回れ回れ」と煽るように歌い上げたのは、メリーゴーランド。

シンガーソングライター、久保田利信さんが1996年発売の『LA・LA・LA LOVE SONG』で「回れ回れ」と祈るように歌い上げたのも、メリーゴーランド。

では2016年、現在厚生労働省が祈るように、煽るように「回れ回れ」と歌い上げているのは?

そう、PDCAサイクルです。

PDCAサイクル

PDCAサイクル(PDCA cycle、plan-do-check-act cycle)は、事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法の一つ。Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4 段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する。

PDCAサイクル – Wikipedia

「企業」における管理業務運用手法として着実に導入が拡大されているPDCAサイクルではありますが、当然ながら「行政機関」においてもその有用性は認識され、活用されています。

PDCAサイクルの前提

PDCAサイクルは、原理的に予測不可能な未来のある段階において「改善」とみなせる何かを手にするための手法です。

現在の時点で未来について確実に言えることは、「未来をよくする具体的な何かは、現時点でははっきりとしない」という否定的な点のみであり、実践の中からその何かを明確にしていかなければなりません。

PDCAサイクルと言う概念が採用されるまではP、D、P、D、P、P、P、…のように、夢のような計画とずさんな実行が繰り返されていましたが、もうそんなことをやっている余裕もなくなった今、行政機関では各所でPDCAサイクルが「回れ回れ」と煽るように、懇願するように唱えられることとなったのです。

恐らく。

医療計画

さて、財政的、制度的な困難を抱える現行の医療制度ですが、既に幾度かの「改革」が試みられています。

ただ、改革は遅々として進みません。

それでも、日本国内の人口構成、世代構成の変化は不可避の現実であり、医療者側だけが改革にどれほど頑強に抵抗しようとも、「変わる」しかこの先もやっていく道はありません。

もちろん、医療の崩壊を受け容れるのであればこの限りではありませんが。

では、どう「変わる」べきなのか?

その指針となるのが「医療計画」です。

第6次医療計画

現在の医療制度は「第6次医療計画」に基づき「変わる」ことが期待されています。地域に根差した医療のあり方、医療資源の配分を各都道府県が主体的に決定していくこととなっています。

もちろん医療の配分は、“やってみなくちゃわからない”未来と、“行政の期待に応える気のサラサラない”医療機関や患者(地域住民)の動向を睨んだ決定となりますのでPDCAを着実に「回れ回れ」して、継続的に改善することが期待されています。

というか、「“行政の期待に応える気のサラサラない”医療機関や患者(地域住民)の動向」と言うのは話が逆で、利己的に動き回る医療者・住民の僕として全体最適を図るのが行政の仕事だったりしますので、ハンパなく大変だろうなと容易に想像できます。

回れ回れ、PDCA。されど回らぬ、PDCA。

第7次医療計画

「てぇへんだ、てぇへんだ!」と叫んでみるだけでは事態は好転しませんので、「医療計画」自体もPDCAサイクルの中に置かれ、現在の立ち位置を検証し、新たな「第7次医療計画」を策定する動きが既に開始されています。

  • 2016年5月20日 第一回医療計画の見直し等に関する検討会

厚生労働省の医政局が進める検討会です。

ここでは平成30年度より実施される医療計画(2018~2023年度)が話し合われています。

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年が社会保障制度における一つの大きな節目として捉えられていますが、この時期に向けた大きな医療計画の改変としてはまさに最後のチャンスとなっており、その真に迫る白熱した議論は第一回目から飛ばし気味に展開されています。

PDCAサイクルの根幹をなすCheckの指標を何にすべきか?、という議論が「いまさら」なのか「あらためて」なのか為されていますね。

PDCAサイクルの「回し方」を含め、ここから一年程度時間をかけてじっくりと議論され、最終的な取りまとめがなされることでしょう。

回れ回れ、メリーゴーランド。もう決して…

医療者が追うべき情報

医療提供者の本質的な価値は専門性に基づく的確な判断と適切な処置であり、その為に様々なことを学ばなければなりません。科学的根拠に基づく学術的な情報を追い続けることが非常に大事なのは言うまでもないでしょう。

しかしながら現在、医師の偏在、病院機能の偏在等々、医療の社会的な問題が諸所で顕在化する傾向にあります。

本質的な価値の提供を心掛けるだけでは居られなくなっているのもまた事実。個々の医療従事者レベルで「医療制度のあり方」というより大きなテーマを学ぶ必要もあるでしょう。

「医療計画の見直し等に関する検討会」における議論の行く末を追うことも、一つの方法として有用ではないかと思います。

(出所)第一回検討会資料より

まぁ、こういった素敵なポンチ絵のオンパレードなので気が抜けるのもまた事実ではありますが…。