偽手術/プラシーボ手術とは?

2014年10月16日 2016年9月1日

偽手術/プラシーボ手術(sham operation/sham surgery)

偽手術(ぎ・しゅじゅつ)とは、何らかの治療行為を目的としない見せかけの手術のことです。疑似手術(ぎじ・しゅじゅつ)と表記されることもあります。英語の“sham”には「見せかけの、にせの、模造の」といった意味があります。

もともとは動物実験における手術の有効性や差異を証明するための対照群として、本来なすべき外科的医療行為(患部切除、組織再建など)を行わず、麻酔と皮膚切開など見せかけの手術だけを行うグループとして偽手術群が設定されました。手術の有効性や差異を検討する場合、“何もしない”グループと比較したのでは、異なる要素が大きくかつ多すぎて正しい判断ができないのです。

例えば、手術の際に麻酔をしたり、皮膚切開時に臓器が空気に触れて乾燥したり、出血あるいは細菌感染したりといった本来なすべき外科的医療行為以外のリスクも考慮して手術の効果を勘案しなければなりません。そこで偽手術群を設定して治療群と比較し、本来の手術を行った治療群との差異が著しく大きければ、その手術の効果が証明されるというわけです。

動物実験における偽手術の例

少々荒っぽい例ですが、盲腸の機能を知りたいと思って実験用マウスを麻酔下で開腹し、盲腸部を切除後、盲腸切除部および回復部の縫合を済ませた場合、偽手術群としては上記操作の内、盲腸を切除せず切開して縫合したものが適当であると考えられます。

プラシーボ手術とは?

プラシーボ手術(プラセボ手術)はプラシーボの一形態として、特に治癒効果がないと考えられる外科的な医療行為を指します。プラシーボ手術が偽手術と訳されるのはこのためです。

一例を挙げてみましょう。プロスポーツ選手などが度々受ける膝や肘など関節部の手術において、治癒効果があると考えれれているのは半月板の修復や切除など具体的で高度な医療行為です。しかしある場合には、具体的な手術を行うと宣言しておきつつ、実際にはただ切開傷を付けただけの偽手術を行っても治癒効果(痛みの軽減、可動範囲の拡大など)が得られることがあります。

我々が生きている現代においては、科学的・医学的に説明不可能な治癒効果は一般的に「プラシーボ効果」と呼ばれています(「奇跡」などとはあまり呼ばれない)。プラシーボ効果をもたらす全てのものが「プラシーボ」なので偽手術はプラシーボですが、特に投薬治療(「偽薬」)等との違いを明確にするために「プラシーボ手術」と表記されることがあるというわけです。

なお2002年に発表された下記論文が、そうした手術によるプラシーボ効果を世に知らしめることとなりました。

A Controlled Trial of Arthroscopic Surgery for Osteoarthritis of the Knee
N Engl J Med 2002; 347:81-88July 11, 2002DOI: 10.1056/NEJMoa013259

偽手術における二重盲検法

何らかの具体的な医療行為の有効性を統計的に証明する場合、適切な対照が求められます。

それが薬の形をしているならば、効果を証明したい化合物(薬効成分)のみを含まない偽薬を用意して、被験者と医師・看護師等の双方がそれを知らされない「二重盲検法」によって適切な対照群を設定することができます。

しかし偽手術の場合、そうはいきません。術者や補助のスタッフは、明らかに「手術」か「偽手術」か分かってしまうからです。

盲検化への最大限の配慮

そこで偽手術を行う際には、手術台で被験者と術者が出会うまで、まさに今から行われる手術が「手術」と「偽手術」どちらなのか知らせない方法がとられます。

手術台へ向かう際の心構えや各種準備、被験者とのやり取りに差が出ないようにするためです。より正確に言えば、いついかなる場合にも「これからおこなわれるのは(ホンモノの)手術だ」と考えながら全ての手順を踏むようにします。

これは二重盲検法ではなく「単盲検法」と呼ばれる方法になりますが、偽手術に関する実験はできうる限りの盲検化への努力がなされた上で行われています。

盲検(単盲検法、二重盲検法)とは? »

手術の有効性はいずこに?

外科治療の歴史上、様々な手術法が開発・実践されてきました。しかし、過去に栄華を極めたいくつかの手術法は有効でないことが科学的に証明されてしまいました。

例えば、広く行われていた心臓に対する手術とプラシーボ手術の有効性を比較してみたところ、術後の治療成績に統計的に有意な差が見出せなかったのです。ただし、両手術に効果がなかったのではありません。確かに術後に快復する傾向があるものの両手術に差がなかったというだけなのです。その手術の効果は“プラシーボ効果”であることが証明されてしまった。ただそれだけのことです。

一般的に、プラシーボ手術(偽手術)は実際に効果があると考えられている手術行為より簡便で迅速に行うことができます。高度な技術も要求されません。どこまでの範囲かは分かりませんが、この“見せかけの医療行為”はその他のプラシーボ同様、現在の医療を大きく塗り替える可能性を秘めています。

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